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chapter14

LastGuardian

chapter14「Visit」

レドナとヒュルイエとの間に、空白ができた。
3人が、頑張ってヒュルイエの注意をひいているからだ。
レドナは、ガルティオンを元の空間に戻した。
両手で、グリュンヒル零式を握り締める。

レドナ「うおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

レドナは駆け出した。
膝に圧力をため、一気に開放する。
あまりジャンプ力で、地面が少し抉れる。

宙に浮くレドナは、グリュンヒル零式を大きく振り上げる。

ヒュルイエ「グゥゥ・・・・?」

やっと、それに気づいたヒュルイエはレドナを見上げた。
しかし、もう既にレドナの攻撃を回避する暇はなかった。

レドナ「喰らえぇぇっ!!ヒュルイエッ!!!」

花のような顔の中心部に、グリュンヒル零式が突き刺さる。
すると、ヒュルイエが反射的に、両手を広げた。
さっきの赤い球体がまた生まれる。
しかし、この機を逃すわけにはいかない。

その球体が、レドナを直撃した。

レドナ「ぐああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

体中が軋みを上げる。
激痛に、声が上がる。
しかし、グリュンヒル零式を握った手は、絶対に離すまいと歯を食いしばって耐える。

カエデ「れ、レドナ!?」
ロクサス「兄貴ー!!」
フィーノ「レドナさんっ!」

その声に、3人は振り向く。
赤い球体がレドナを飲み込んでいる姿を見て、3人は目を見開く。

赤い球体が消滅した。
だが、レドナはまだ"そこに居た"。
イミティートの黒衣が、所々焼け焦げている。
それでも尚、レドナはそこに居た。

全てを守るために――。

レドナ「これが、俺たちの力だぁぁぁっ!!!」

グリュンヒル零式に刻まれた赤い紋章が光り輝く。
そして、柔らかい音が一瞬の沈黙の間で鳴り響く。

レドナ「ウェポン!!クラッシュッ!!!」

そう、レドナは叫んだ。

イクトゥーにとって、ヒュルイエは力。
力は、武器。
ヒドゥンがレドナに教えたこと。
それは、"ヒュルイエは武器である"と言うこと。
それは、ウェポンクラッシュが通用するということを意味する。

怪物に、武器殺しの大剣が通用する、というのはいくら物理の無い世界でもありえない。
しかし、目の前の光景は、まさにそれを覆していた。

零式の刺さった部分から、ヒュルイエに亀裂が入る。
それは、見る見るうちに全身に入っていく。

ヒュルイエ「グ、ウ、オォォォォ・・・・」
レドナ「あの世に、帰りやがれっ!!」

レドナが、グリュンヒル零式を抜いた。
途端、ヒュルイエが本当の岩石のように、崩れ落ちた。

ヒュルイエ「グオオオォォォォォォッ!!!!」

苦痛を訴えるヒュルイエの声。
しかし、その声もだんだん掠れていった。
10秒も経たない内に、崩れ落ちたヒュルイエの欠片は粉となって消えて行った。
完全消滅、である。

レドナ「やった・・・・な」

消え去ったヒュルイエの影を振り返りながら、レドナは微笑みながら呟いた。
そして、そのまま限界に近い体力と魔力で戦ったレドナは、地面に倒れた。
意識が遠のく中、皆を守ることができたという感覚が訪れた。
それ以降は、真っ暗闇に佇んでいた以外、何も覚えていなかった。


レドナが次に目覚めたのは、その日の夜だった。
前と同じく、自室のベットで寝ていた。
まだ少し、頭がボーっとする。
安全ラインには達したようだが、まだギリギリといった感じだろうか。
意識があるときに寝るのが嫌いなレドナは、すぐにベットから起きた。

1階に下りると、フィーノと香奈枝が台所で料理を作っていた。

フィーノ「あ、レドナさん!
     今日はお疲れ様ですっ!」

居間へ入ってきたレドナに気づいて、フィーノが嬉しそうに言う。

香奈枝「暁ちゃん、頑張ったわね!」

どうやら、フィーノから事情を聞いたらしい香奈枝も嬉しそうに言った。

レドナ「あぁ、なんか変な感じだけど・・・いちお、お疲れ様」

まだ本調子でないレドナも、なるべく笑顔を作って言った。
テレビを付けると、どのチャンネルでもノイズの事について報道されていた。
『謎の現象起こる!?突然神下市、月影市のスピーカーからノイズ』
『宇宙人からの交信、神下市月影市に!?』
などと言う、妙なタイトルがつけられていた。
呆れを通り越して、どちらかといえば笑みがこぼれた。
誰も真相は『ヒュルイエの降臨で現実世界に影響現る』ということを知らない。
それを、現実世界の物理という枠内で、どう表現するか。
そう違う角度で、テレビを見ていると、自然とそういう風に笑みがでる。

そんなことを考えてる間にも、夕食ができたらしい。
フィーノと香奈枝が色々と盛ってある皿を持って来た。

その日の夕食も、いつもと変わらず、普通のメニューだった。
ご飯に味噌汁にサラダと少量のおかずが何品か。
残すことも無く食べ終え、体力魔力も順調に回復したレドナは、自室に戻った。

すると、レドナの携帯に4通ものメールが来ていた。

===============================
title:やったね!
from:Kaede Kinosita
-------------------------------
今日はお疲れ様!!
って、昨日も今日も続けてお疲れ
だね(苦笑

体の方大丈夫?
まぁ、レドナの事だから心配する
だけ無駄か(^-^)

それで、今回の『イクトゥー事件』
と『ヒュルイエ事件』については
こっち側で任務終了ってことにな
ったから、また会える機会ぐっと
少なくなっちゃうね・・・。

まぁ、私はずっとウィルムマンシ
ョンに住む予定だから、暇なとき
は何時でも遊びに来てね!
じゃっ!
===============================

レドナ(そっか・・・カエデの任務は悪魔でイクトゥー討伐だったからな・・・。
    会いづらくなると、ちょっと寂しいな)

===============================
title:兄貴おっつー
from:Rokcsash Brown
-------------------------------
兄貴オッツー!!
久々に兄貴の熱い戦い見れて、ち
ょっと感激(笑

ぁ、ちなみに『ロクサス・ブラウ
ン』ってのはこっちでの偽名。
ロクサスに変わりないから問題な
いか(再笑

俺も、姉貴と同じで、任務終了っ
てことになったから、兄貴とは会
いづらくなるかも(汗汗
でも、永遠にバイバイってわけじ
ゃないから、たまには会いに行く
よ!
兄貴も、町で見かけたりしたら気
軽に声かけてくれよ~!
じゃ、またいつか!

===============================

レドナ(ロクサスも、やっぱこっちで偽名使ってたんだな。
    それにしても、あいつもカエデと同じで会いづらくなるのか・・・)

===============================
title:勇者王!
from:Sin Takada
-------------------------------
よっ!我等の勇者、鳳覇 暁!!
ほんっとに、ありがとう!!

また暁の事だから、普通な顔して
る気がするけど、素直に喜ぶのも
大事だぜ!たぶん。

でも、表にベラベラいうと、正体
バレちまうからダメか(-□-;)
まぁ、俺たちは本気で感謝してる
よ!

じゃ、また明日学校でな!
===============================

レドナ(素直に喜ぶのも大事・・・か。
    初めて真にいいこと教えてもらった気がするな)

===============================
title:守護者さんへ
from:Kasumi Aoyama
-------------------------------
こんばんは!
暁君、お疲れ様。
話はフィーノちゃんから聞いたヨ。

本当に、ここを守ってくれてあり
がと!(≧ー≦)ノ
さすがは、ガーディアン(守護者
って意味だよね?)さん(笑
これからも、よろしくね!
私達で、力になれたらいつでも力
になるよ~!

じゃあ、また明日学校でね~。
===============================

レドナ(守護者か・・・・そっちの言葉で言われたのも久しぶりだな。
    でも、ちゃんと名に恥じぬように俺も頑張れたかな)

全部のメールを読み終わって、レドナは携帯を閉じた。
ようやく、皆を守ったんだという実感が、再び大量に湧いてきた。

世界の裏側を知っているのは極少数。
皆、裏の世界で何が起こっているのかは知らない。
いや、知られていないからこそ平和という物が在るのかもしれない。
そのために、レドナ達は裏の世界で、歪んだ世界にさせないために戦い続けてきた。
人々が平和に暮らせるような世界にするために。
裏の世界で、世界を歪ませる根源を消滅させた。
けれども、それで人に喜ばれたことはなかった。

もしかしたら、自分達は喜ばれるということが嫌いなのかもしれない。
喜ばれるために戦う、誰も自分を見なくなったら戦意が衰える。
そういうことを恐れていたのかもしれない。
それは、1人1人によって違うだろう。

ただ、レドナは素直に喜ばれることに対して、自分も喜ぼうと思った。
レドナの存在意義、それは皆を守ること。
大切な、友とのかけがえの無い日々を守り抜くこと。
その重要性を、再確認することが、できた気がした。

その時、自分で笑っていることにはっと気が付いた。
やっと、素直になれた自分を、嬉しく思った。
そして、その日は少し早めに目を閉じた。


『ヒュルイエ事件』と名づけられた一連の事件から数ヶ月経った。

レドナ「いってきま~す」
フィーノ「いってきますね!」
香奈枝「はい、いってらっしゃい、気をつけてね~」

玄関外まで見送る香奈枝を背に、レドナとフィーノは登校した。
しかし、この道は神下中学へと続く道ではない。
今は、2人とも神下高校の1年生だ。
団地を抜けて、少し歩くと、見慣れた2人が立っていた。

真「よ~ぉ、暁、睦月ちゃん!」
香澄「おはよ~」
レドナ「おはよーさん」
フィーノ「おはようございます~」

いつもの如く、4人で神下高校へと向かった。

真「あ、そうえば、芸能人の○○○と、○○○が結婚するってよ!?」

真が、唐突に何気ない話をし始める。
登校時間が長くなったためか、小さな話題でもかなり盛り上がる。

AM8:10、4人は月影市にある神下高校へと到着した。
昇降口で、靴を履き替え、教室に向かう。
それに、また4人同じクラスである。
例によって、真の席の後ろがレドナという方式は未だ成り立っていた。
真にしても、レドナにしても、それは嬉しいことだった。

その日の授業もあっけなく過ぎていった。
帰りは、真が強引にゲームセンターに誘うので、しかたなくレドナもそれに付き合った。

真「うぉっ!新しい台入ってんじゃん!」

早速真が、空いている台に飛びついた。
レドナも、来たからには何かしようと、辺りを見回した。
すると、見慣れたブロンズの髪をした少年を発見した。
相手もそれに気づき、声をかけてくる。

ロクサス「よっ、兄貴ー!」
レドナ「よぉ、久しぶり」
ロクサス「兄貴も暇つぶしか?」

ニヤリと笑ってロクサスが言う。

レドナ「バカの"監視"みたいなもんかな」

そういって、後方で、すでに開始10秒で熱中している真をちらりと見た。

ロクサス「あぁ~、なるほどね、あはは・・・」

意味を理解したロクサスが、苦笑する。

レドナ「お前も暇なら、一戦するか?」

ちょうど、ロクサスがやっているのは格闘ゲームで、もう一台空いていた。

ロクサス「俺も何気にその気で兄貴に声かけてみたり」
レドナ「甘くみんなよ」
ロクサス「兄貴もな」

2人は微笑して、台に座り、100円を入れてスティックを握った。

ロクサス「それにしても、最近はな~んにもねーよなぁ」

目は画面をきっちり見ているロクサスがふいに声をかけてくる。

レドナ「久々にドンパチやりたいっていうような発言だな」

一方のレドナも、声だけロクサスにかける。
ちょうど、スティックを操作していたため、最後の"な"に力が入る。

ロクサス「そんな意味じゃねーよ。
     ただ、これがずっと続くといいけどなってこと」
レドナ「ただ、平和ボケになるのはやめといたほうがいいかもな」
ロクサス「どういう意味だよ?」
レドナ「こういう意味・・・ってね」

ロクサスの画面に、K.O.の字が現れた。
逆にレドナの画面にはWINの字が出ている。

ロクサス「あぁー、負けたぁ~」

両手で頭を抱える。

レドナ「もう一戦するか?」
ロクサス「あたりまえだって!」

また、微笑して、2人は100円を入れた。
対戦結果は、2VS2の引き分けで、事を終えた。
ロクサスは用事があるようで、ゲームセンターを後にした。

久々に白熱したレドナも、そろそろ帰ろうと、真を呼びに行く。
すると、真はどうだという顔で、画面を指差した。

真「どうよ、初日でコレ」

見ると、画面に真のキャラクターデータがランク2位になっていた。

レドナ「俺に越されないように日々精進しとくんだな」
真「少しは手加減しろよ~!」

プンスカ怒る真をよそに、レドナは外に出た。
すぐに真もレドナを追いかけて外にでる。
そして、一緒に途中まで帰り、十字路で別れた。

真「じゃ、また明日な~!
  今日は付き合ってくれてサンキュー!」
レドナ「おう、また明日。
    たまにはまた誘えよ~」

軽く手を振り、2人は自分の家へと歩いていった。

夕焼け少し暗みかかった空を見上げた。
夏だというのに、少々肌寒かった。

レドナ「早くかえらねーとやばいかもな・・・」

レドナは走って家まで帰った。

その背後、明かりの灯った2つの街灯の上に、2つの影があった。

???「アイツがレドナ・ジェネシックか?」

物騒な赤い服を着た小柄な少女がもう1に問う。

???「あぁ、間違いないだろう。
    だが、今はまだ動く時ではない」

冷静に、もう1人の鎧のような服を着た大人びたピンクの長い髪を持つ女が答える。

???「わぁーってるよ」

その時、大人びた方の女の携帯がなった。

???「時間だ、そろそろ戻るぞ」
???「あいよ」

そして、2人はすぐに消えた。
跡形も無く消えた後、レドナは振り向いた。

レドナ「・・・ん?」

レドナ(何かいたような・・・)

もう一度、目を凝らしてよく見る。
しかし、何も居ないことを確認する。

レドナ「気のせいか・・・・」

最近は戦闘がほとんどないため、体が妙な感覚に敏感になっているんだろう。
そう、自分に言い聞かせ、再び家へと向かう道を走った。


今まさに、新たなる物語が始まろうとしていた。

その結末は、まだ誰にもわからない。

ただ、分かることは1つ。

再び、この神下市が戦場(ステージ)となることだ。


そして、もうその戦いのギアは回りだしていた。

Last Guardian fin

To be next STAGE...


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